ISO14001:2004年版の基本と改正点

ISO9001&14001規格読替要領
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ISO14001:2004年版で追加された定義

ISO14001:2004年版では以下の8つの定義が追加されました。

・手順:活動又はプロセスを実行するために規定された方法
・監査員:監査を行う力量を持った人
・文書:情報及びそれを保持する媒体
・記録:達成した結果を記述した、又は実施した活動の根拠を提供する文書
・修正:検出された不適合を除去するためにとられる処置
・是正処置:検出された不適合の原因を除去するためにとられる処置
・不適合:要求事項を満たしていないこと
・予防処置:発生していないが起こる可能性のある不適合の原因を除去する処置

ISO14001:2004年版での「適用事業所」

先日のある新聞でISO14001:2004年度版の改訂について「改訂後は事業所ごとの認定ではなく、全事業所でISO規格への適合が求められる」とのコメントがありましたが本当ですか?という質問がよくあります。

今回のISO14001改訂の趣旨についてJABからは以下のようなコメントが発表されています。
「企業等がISO14001の審査登録(認証)を取得する際に、対象組織の一部を適用範囲とし、重要な環境側面を除外した形でシステムを構築し、あたかも組織のすべてが認証取得したかのようなアピールを防止するため、組織の中で環境マネジメントシステムを適用する範囲を明確にし、決定した範囲内の「活動、製品及びサービス」の全ての環境側面を考慮しなければならないということを要求事項として明確化したものです。」

よって、「改訂後も、ISO14001は認証の対象は、企業等の申請によるものであり、一事業所でも、全事業所でも構いません。」

ISO14001:2004年版での「環境基準」

ISO14001が改訂され、「企業活動の一部が一定の環境基準をクリアすれば認証を取得できる仕組み」とありましたが、どうでしょうか?

JABでは、以下のようにコメントしています。
「企業がISO14001の規格の要求事項を満たした環境マネジメントシステムを持ち、機能していることにより審査登録(認証)を受けることが出来ます。

同規格の要求事項は、企業等の活動が環境に与える負荷を軽減するためのマネジメントシステムに関わるものであり、一定の環境基準のクリアというような、具体的な環境パフォーマンス自体についての要求事項はありません。」

企業が自社の環境側面を的確に捉えて、いかに環境負荷を削減する仕組みを構築するかがポイントで、環境基準は問題ではありませんのでご注意ください。

ISO14001:2004年版改正点

ISO14001:2004「4.2 環境方針」

4.2 環境方針

ISO14000:1996年版

e)環境方針を、全従業員に周知する。

ISO14001:2004年版

f)環境方針を、組織で働く又は組織のために働く全ての人に周知する。

組織で働く人とは、従業員、パート、アルバイトであり、組織のために働く人とは、請負業者などが考えられます。つまり、環境方針を請負業者などにも周知(掲示・配付など)させる必要があります。

ISO14001:2004「4.3.1 環境側面」

4.3.1 環境側面

ISO14000:1996年版

組織が管理でき、かつ影響が生じると思われる活動、製品又はサービスの環境側面を特定する手順を確立し、維持すること。

ISO14001:2004年版

組織が定めたEMS適用範囲の活動、製品及びサービスについて、組織が管理できる環境側面及び組織が影響を与え得る環境側面を特定する手順

※1996年版の活動、製品又はサービスという表現の“又は”では任意に選択してよいと解釈される可能性があるため、“及び”になりました。

組織が与え得る環境側面については、その範囲が拡大解釈され すぎることが懸念されるので、“組織が定めたEMSの適用範囲”と明確になりました。

従って、組織が影響を与え得る環境側面の範囲を明確にする必要があります。

ISO14001:2004「4.3.2 法的及びその他の要求事項」

4.3.2 法的及びその他の要求事項

ISO14000:1996年版

組織の活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持すること。

ISO14001:2004年版

組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照し、環境側面にどう適用されるのかを決定する手順。

EMSを策定し、実施し、維持するに際して、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を、確実に配慮。

※例えば、大気汚染防止法が適用されている特定工場において、加熱炉や焼却炉の排ガスの規制値を 明確にするというような意味と考えられます。従って、特に要求事項が増えたというわけではないと考えられます。

その他の要求事項の遵守状況も定期的に評価する必要ができました。付属書Aを参考にして、組織が同意するその他の要求事項の有無を確認する必要があります。

その上で、その他の要求事項を順守するための仕組みとその順守状況を定期的に評価する仕組みをEMSに組み込み、実施する必要があります。

ISO14001:2004「4.4.1資源、役割、責任及び権限(項目名変更)」

4.4.1 体制及び責任

ISO14000:1996年版

資源には、人的資源及び専門的な技能並びに資金を含む。

ISO14001:2004年版

4.4.1 資源、役割、責任及び権限(項目名変更)
資源に含むもの
・人的資源及び専門的な技能
・組織のインフラストラクチャー、技術
・資金

※環境側面を適切に管理するために必要な、インフラの整備及び技術の導入・開発などが経営層の役割及び責任として明確にされたと考えられます。従って、必要なインフラストラクチャー及び技術を明確にする必要があります。

ISO14001:2004年版「4.4.2 力量、教育・訓練及び認識(項目名変更)」

4.4.2 訓練、自覚及び能力

ISO14000:1996年版

著しい環境影響の原因となりうる作業を行う要員は、適切な教育、訓練、及び/又は経験に基づく能力を持つこと。

ISO14001:2004年版

4.4.2 力量、教育・訓練及び認識(項目名変更)

著しい環境影響を引き起こす可能性を持つ作業は、その作業を実施するための力量を有する人が実施。その力量は教育、教育・訓練又は経験に裏打ちされ、その記録を保持。

ISO9001:2000年版と整合されました。ISO14000:1996年版で求められていた教育・訓練の記録だけではなく、力量の裏づけとして教育及び経験(経歴)が関わる場合は、その記録が必要になります。又、ISO14000:1996年版同様、請負業者などにも適用されます。

ISO14001:2004年版「4.5.2 順守評価(新項目)」

4.5.1 監視及び測定

ISO14000:1996年版

関連する環境法規制の遵守を定期的に評価するための文書化した手順を確立し、維持すること。

ISO14001:2004年版

4.5.2 順守の評価(項目名変更)

法的要求事項の遵守を定期的に評価する手順を確立し、実施し、維持する。組織が同意するその他の要求事項の遵守を定期的に評価する手順を確立し、実施し、維持する。両方の定期的評価結果の記録を保持する。

※4.5.2 順守の評価として独立しました。組織が同意するその他の要求事項の遵守を定期的に評価する手順が追加され、両方の定期的評価結果の記録を残すことも併せて追加されました。従って、対応が必要になります。

ISO14001:2004年版「4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置」

4.5.2 不適合並びに是正及び予防処置

ISO14000:1996年版

不適合を取り扱い調査し、不適合によって生じる影響を緩和する処置をとり、並びに是正及び予防処置に着手して完了する責任と権限を定める手順を確立し、維持すること。

ISO14001:2004年版

4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置
不適合を管理し、是正処置及び予防処置をとるための手順。

a)実際に起こった不適合を特定し、不適合を修正し、環境影響を緩和
b)実際に起こった不適合を調査し、その原因を追究し、再発を防止
c)起こる可能性のある不適合の予防処置の必要性を評価し、予防処置を実施
d)実施した是正処置及び予防処置を記録
e)実施した是正処置及び予防処置の有効性を見直す

ISO9001:2000年版との整合性が図られ、定義も追加されました。記述がより明確になり、d)及びe)が追加されました。

ISO14001:2004年版「4.6 マネジメントレビュー」

4.6 経営層による見直し

ISO14000:1996年版

経営層による見直しのプロセスでは、経営層がこの評価を実施できるように、必要な情報を確実に収集すること。

ISO14001:2004年版

4.6 マネジメントレビュー(項目名変更)
マネジメントレビューへのインプット

・EMS監査及び遵法評価の結果
・外部の利害関係者からのコミュニケーション(苦情を含む)
・組織の環境パフォーマンス
・目的及び目標の達成度
・是正処置及び予防処置の状況
・前回までのマネジメントレビューの結果に対する対応処置
・組織を取り巻く状況の変化(法的及びその他の要求事項を含む)
・改善のための提言

ISO9001:2000年版との整合性が図られました。マネジメントレビューへのインプットが明示されました。ISO14000:1996年版の付属書Aにも例示されていましたが、要求事項の方が、項目も増えており、対応が必要です。

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