ISO内部監査が「無不監査」

ISOで経営課題解決
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ISO的「力量の認識」

ISOでの教育訓練の第一歩は「力量の認識」から始まります。

ISOマネジメントシステムの構成員(ある製品のみで取得しようとしている場合は、ISOシステムに入っていない方もおられるのでこういう言い方をします)が、会社が定める基準・水準どおりの製品を作れる能力、ISOシステムを運用する能力を持っているかを判断しなければなりません。

難しく考えると、一人一人の能力をデータ化し、人事制度の評価項目などと連動させて管理する方法もあります。

しかし、これには管理者の人材管理能力も問われることになり、ISO運用が困難になるケースが多く、アドバイスとしては、あまり難しく考えずに、営業なら商品知識やビジネスマナー、設計なら設計の知識など職種別の最低要件を挙げることです。

その上でレベルアップするのに必要な教育・訓練、資格などを定義すると良いでしょう。要は、「製品実現」にあたり必要な能力は何かを明確にすることであり、社内で定義すればよいのです。

力量から考えるISOシステムの有効性と効率

ISO規格では、「有効性」とは「計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度」とあり、「効率」とは「達成された結果と使用された資源との関係」と記されています。

「有効性の改善」や「有効性の評価」という言葉がよく出てきます。「どうすればよいのか」という質問がこの言葉に集中します。難しく考えすぎなのかもしれません。

事例で説明しましょう。

例えば社員の一人を研修に行かせたとします。会社としては「こういう能力を身に付けさせたい」とか「こういう意識を持つようになって欲しい」など、期待することがあるはずです。

それに対して本人がどう感じたのか、どの程度能力が身についたのかを判定すれば良いのです。合格・不合格でも良い。達成度○○点という点数をつけてやっても良いのです。有効であった、有効でなかったでも良いのです。

本人に研修報告書として、研修の参加目的と達成結果を判定させても良い。いずれの方法にしても、会社のシステムとしてどういう方法で評価するのかをわかりやすく手順化することです。

人事評価などで、人物評価をする際に評価項目が設定されています。それと同じように各項目で考えられる評価基準を考えましょう。

それほど難しいことではありません。最初は一つでも二つでも良いでしょう。思いつけばその都度増やせば良いですし、増やす行動こそ「有効性の改善」です。

ISO内部監査の意味

ISO規格要求事項の中に「内部監査」というものがあります。「内部監査」とは社内(内部)で自社で構築したISOシステムが運用されているかを社内の人間が監査(チェック)することです。

この「内部監査」のように、「今までに無かった手順」は「果して必要なかったのか?」ということです。

ISO規格の言葉を引用すると「合否判定基準(合格か不合格かを何らかの判定基準を社内に設けなさいということ)」や「検査(外注した製品や、購入した部品などが使用に耐えられるかどうかをチェックする受入検査や、一つの工程が終わった際に中間でチェックする中間検査、工程内検査や、最終製品が各検査や項目に合格しているかをチェックする最終検査などがある)」など

これらに関する「記録(ISOではかなり重要で、何事も記録として書面やコンピュータなどのデータに残しておく必要があります)」が存在していなかったのではないでしょうか。でも、何らかの社内ルールは存在していたはずですよね。

ISO内部監査が「無不監査」

ISO内部監査の主な目的は、ISOシステムが運用されているかを確認するためです。真剣に監査をすればするほど、実際の手順通りに出来ていない、記録となるフォーマット類が残されていないなどの「不適合」と呼ばれる事項が数多く発生するはずです。

ところが、この「不適合」が発生すると、社内の仕組みを見直すことが必要になってくる場合があります。

例えば、「決まったフォーマットはあるが、記入する人によって書き方が違い統一感が無い。」というような場合に、手順書には書いてあるが、そのフォーマットに書き込む時にわざわざ手順書を見る人は少ないのです。

そこで改善事項として「フォーマットの下段空白部に記入手順を追加する」とします。より良いシステムにはなるが、そのためには変更に掛かる時間も必要になるのです。

変更に掛かる時間が惜しくて「まあいいか」的にISO内部監査が行われている場合が少なくありません。ただし、このケースは割とISO内部監査の本質が理解されているケース。多くの場合は、ISO内部監査のやり方そのものが間違っていることが多いのです。

ISO内部監査は運用状況を監査する

ISOシステムの「運用状況」を見なければならないのに、監査しているのは「ISOマニュアル」や「ISO手順書」。

または、各手順がどこに書かれているかを覚えているかどうかを監査する。ISO審査に合格する前の初めてのISO内部監査ならいざ知らず、仮にもISO審査に合格し、運用中のISO内部監査ではお粗末ですね。

ISO審査に合格したISOマニュアルや書面だけの監査では不適合が発生するはずがありません。外部からのISO審査(内部監査と区別するために外部からの監査を「審査」と呼んでいます)では発見できない、内側の監査を行ってこそ、ISOシステムの改善へと繋がるはずです。

内部の人が行うからISO内部監査ではなく、内部まで見るから内部監査なのです。真の内部監査を実施すれば不適合(こうしたほうがいいのではないかというような、「勧告」や「推奨」事項を含む)は、必ず発生するはずです。

不適合が発生しない(無い)ような無(ない)不(ぶ)監査は、監査そのものが不適合である。実際にこの種の指摘を定期審査で受けることがあります(ほぼ間違いなく受ける)のでご注意を!

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