ISOの8原則

ISO9001&14001規格読替要領
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ISOの原則その1:顧客志向

ISOでいう顧客志向とは「組織は顧客に依存しており、それゆえ現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を超えるように努力すべきである。」と明記されています。

特に「顧客満足の測定」に関しては、それを把握するための「場」(市場・流通・販売店・営業等)、「方法」(ヒアリング・アンケート・新聞・業界紙等)、「指標」(苦情件数・シェア・受注量等)が客観的データに基づいていなければならないとされ、さらには、顧客のニーズを満たすように、「組織の能力を改善」することや「必要な知識とスキルを備えさせる」ことが強調されています。

ISO9001:2000年版への対応は、組織の本質を名実共の顧客志向へと昇華させる絶好のチャンスではないでしょうか。

ISOの原則その2:リーダーシップ

ISO規格によると、リーダーシップとは「リーダーは組織の目的、方向及び内部環境を一つにまとめあげる。リーダーは、人々が組織の目標を達成することに十分に参画できる環境を創りだす。」とあります。

具体的には、ISOリーダーが事例等具体的なものを示しながら前向きに、先導し、明確な方針や目標をもって活動することが肝要です。

さらには、ISOシステムに関係する人員の教育・訓練・指導を行うと共に、ISO品質達成目標を実現するための戦略を持っている事が必要となります。経営者はもちろんのこと、リーダーの責任ある行動がそのまま組織活性化に直結するのです。

ISOの原則その3:人々の参画

ISOでいう人々の参画とは「すべての階層の人々は組織のとって不可欠なものであり、その全面的な参画によって、組織の便益を最大にするためにその能力を活かすことが可能となる。」と明記されています。

この原則には、1.方針と戦略の策定、2.ゴールと目標の設定、3.組織の運営管理、4.人材管理の4つの事項が含まれており、何やら経営計画に必要な項目と類似しています。

更に、「関係者は問題解決を自分のことと捉え、その責任を受け入れていること」や「関係者は改善のために積極的に機会を捜し求めること」など、企業経営に必要であるにもかかわらず、なかなか実行できていない項目が含まれているのです。

そう!ISOは業務改善だけでなく人々が参画することによって組織風土さえ変えることが可能になる仕組みも持っているのです。

ISOの原則その4:プロセス・アプローチ

例えば、教育・訓練した際に、そのできばえや成果を何らかの方法で測定するというようなことで、プロセスのインプットとアウトプットを特定し、計測することが大切であるとされています。

つまり、ISOマニュアルの改訂の教育・訓練を行ったときに、試験をしても意味がなく、実際に改訂されたISOマニュアル通りに運用できているかどうかを確認する必要があります。

あらゆる業務にプロセス・アプローチを採用することは、コスト削減、エラー予防、差異の発生抑止、サイクル時間の短縮、アウトプットの予測可能性の向上をもたらします。

ISOの原則その5:マネジメントへのシステム・アプローチ

ISOマネジメントへのシステム・アプローチとは「所与の目標に対して相互に関係付けられたプロセスからなるシステムを明確にし、理解し、運用することは、組織の有効性及び効率に貢献する。」ということです。

ISOへの取り組みは、特に「業務改善」の意味合いが強いようです。ほとんどの会社に有効なISOマニュアルや手順書類がなく、個人の能力によるところが大きいためでしょう。

ISOを取得することで手間が多くなり、時間が非効率になったという声も聞かれますが、今までいかに適当にこなせていたかということでしょう。

「組織としての会社」を考えた場合には、手順に沿った業務かつ効率の追及が重要課題です。ISO規格要求事項を理解し、それに沿ったプロセスを実行すれば、必ずや、組織として効率的な動きになるはずです。

ISOの原則その6:継続的改善

ISO9001:2000年版には、組織の永遠の目標は『継続的改善』であると明確化されています。そのために、「1.より競争力の強い事業計画の作成とその達成、2.現実的かつ挑戦的な改善目標の設定とそのための資源提供、3.組織内の人々のプロセスにおける継続的改善への参画、4.組織内の全ての人々に、改善のためのツール・機会を与え、奨励すること」が重要とされています。

つまり、組織の各個人の目標としてプロセスやISOシステムの継続的な改善が行われることが大切で、そのためには、戦略的な事業計画の中にいかに組織の継続的な改善目標を組み込むかがポイントのようです。

ISOシステムといっても、組織としての目標と密接に関連していることを物語っています。業務を見つめ直す最大のチャンスではないでしょうか。

ISOの原則その7:意思決定における事実に基づくアプローチ

ISOでいう意思決定における事実に基づくアプローチとは「効果的な決定は、データ及び情報の論理的又は直観的な分析に基づいている」と記述されています。

ヒト・モノ・カネに情報が加えられて久しいですが、ISO9000s:1994年版では「4.20統計的手法」でデータや情報収集の必要性が問われていましたが、必ず必要というわけではありませんでした。

ISO9001:2000年版では、要求事項の8条項「測定、分析及び改善」で、4.20の統計的手法の項目が分散されたように感じます。顧客満足を更に追及するため、「モニタリング」なる要求事項も発生しています。

顧客満足を得られているかどうかの判定は自己満足の次元でしたが、統計的手法の価値を理解することで、データと情報の重要性を説いているのです。また、何でも論理的というわけではなく、直観的で良いというのも面白い点です。

ISOの原則その8:供給者との互恵関係

ISOには「組織及びその供給者(現在の下請負業者)の価値創造能力は両者の互恵関係によって高められる。」とあります。

まず、重要な供給者を選定し、単なる下請負(組織の手足となって言うままに便宜をはかり、仕事をしてくれるところ)ではなく、相互の協力で価値を高める力が増す関係であることが必要とされています。

第一に、明確で、開放的なコミュニケーションを創り出すこと、第二に、製品の共同開発、共同改善に着手すること、第三に、顧客ニーズを共同で、明確に理解することが大切だとされています。

さらには、情報や将来の計画を共有し、供給者の改善とその達成を認知することまで要求されるようになります。

つまり、これまでの下請負業者の選定・評価から一歩踏み込んで、品質目標を共有しながら、お互いが改善し、それをチェックするシステムが求められるということです。より深い信頼関係が大切ですね。

ISO原則その8の供給者選定の基準と顧客ニーズの共有

選ぶというからには何らかの基準が必要になります。おそらく「長いつきあいだから」とか「特に問題ないから」とか「他では手に入らないから」などという曖昧な基準はあるとしても、第三者がみても納得のいく明確な理由となると難しいもの。

また、今更そんなことをするのは大変だという現場の声が聞こえてきそうです。この際一度考えてみたいものです。

仕入先とより強い協力関係が結ばれると、「顧客ニーズの共有」が必要になります。同じ品質方針で結ばれた協力関係である以上は、これまで以上に情報、特に顧客が何を求めているかという点では同じ認識と理解が必要になるのです。

お互いのコミュニケーションの頻度を高めながら、時として共同開発や共同改善に取り組むことも考えられます。組織側から考えれば、情報の入口が増え、同じ目標に向かう仲間が増えると同時に、企業の内側では解決し得なかった顧客ニーズを満たすための互恵関係が結ばれることになるのです。

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